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【2020年12月 写真展示のお知らせ】

 

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© Tomoaki Akasaka 2020

赤阪友昭写真展「salmon run」

期 間: 2020年12月05日(土)~12月20日(日)
時 間: 12:00-19:00(水・木曜日 休み)
場 所: photo gallery Sai
     553-0002 大阪市福島区鷺洲2-7-19
     http://photo-sai.com/access.html
入場料: 500円(高校生以下無料)

※ なお、会場ではコロナ対策に伴い、入場を制限する場合もございます。予めご連絡をいただければ会場状況など
  ご案内させていただきます。ご理解とご協力をお願いいたします。


【写真展内容】

2013年から3年をかけて、福島県南相馬市及び浪江町の立入り制限区域内を軸に被災地での撮影を続けてきました。そこで見たものは、人が手を放した場所をゆっくりと取り戻してゆく自然の姿でした。震災の日に津波が残した海水は、かつての干拓地をそれ以前の姿である浦へと戻し、冬になると白鳥を含め何万羽という水鳥の群れが飛来するようになっていました。無人となった家の玄関前には、 直径10センチ以上の杉が育ち、家の中はアライグマたちの格好の棲家となっていました。

かつて、わたしたちが引いた自然との境界線が次第に薄らいでいく。その場所に立ち、放射線の線量計に目を落とす。その数字は、わたしたちに「絶望」と言葉を突きつけます。わたしたちはこのまま土地から捨てられるのか、「問い」は繰り返され、福島での撮影に心身ともに疲弊してゆく自分を感じていました。

それでも多くの生きものたちの弛まざる営みは、そんな場所すら自然の風景へと遷移させていきます。白鳥を含めた何万羽という水鳥が水辺に憩う風景は、まるで北方の原野のように美しかった。その美しさに惹かれ、被災地の自然の風景を撮影し続けてきた。自然とは何か、人と自然の関係はどうなっていくのか、心に浮かぶ問いを質すため、わたしは自らの原点であるアラスカへむかった。

ー これまで、北極圏を含めたアラスカでの経験から、いったん人が手にした場所がふたたび原野に戻る風景をいくつも見てきました。アラスカに広がる原野も、けっして前人未到の土地ではない。あらゆる生命の営みとともに人が暮らしてきた土地なのです。土地の自然回帰は、わたしたちの予想を遥かに上回るスピードで行われます。かつての森は、惑星の寒冷化に伴い氷に覆われ、氷河期が終われば海となり、ふたたび森となる。そこは、やがて村となり、人が去ればふたたび森となる。それがわずか数万年の間に起こるのです。

土地の風景は、あらゆる生命の営みによって造形される。本来、わたしたち人間もその営みの一端を担うものに過ぎないはずです。サーモンが大挙して遡上するアラスカで、巨樹が育つ豊かな原生林の土壌の栄養素からN15という窒素の安定同位体が検出されます。食物連鎖を記録するその同位体からその栄養素が海で作られたことが分かるといいます。この視点を生命体そのもに移せば、繁殖のために海から川の源流を目指すというサーモンの本能は、彼らにプログラムされた「他者のために生命を供する」という命題ゆえだということになります。未来を考えるときに、人間の時間軸から自然の時間軸へとシフトしてみる。大地はけっして失われたのではなく、奪われたのでもない。 人間を除けば、あいもかわらずあらゆる生命体は与えられたその場所で遷移しつつ、すこしずつその土地を豊かにしてくれている。もし、人々の営みがこうした生命観に基づいて行われるのであれば、それはやがて人々と土地との繋がりを育み、その地のランドスケープへと転化されていくであろう。

赤阪友昭  

《関連イベント》

なお、各イベントでは、コロナ対策を踏まえて少人数制での開催となるため、日程を複数ご用意しております。ご都合の良い日にご参加いただければと思います。ご理解とご協力をお願いいたします。

● オープニング・ギャラリートーク「サーモンと熊の森から」

日 時:11月22日 19時〜
参加費:1,000円(入場料+ワンドリンク)
申込み:akasaka.tomoaki(a)gmail.com まで ※(a)は「@」に書き換えてください。

メールのタイトルに「ギャラリートーク希望」と記載の上、① お名前、② 連絡先(メール及び携帯電話番号)をお送りください。

 

● ドキュメンタリー映画「あたらしい野生の地―リワイルディング」上映会

<上映スケジュール>

12月11日(金)19:30〜20:15
12月13日(日)10:00〜11:45
12月18日(金)19:30〜20:15
12月20日(日)10:00〜11:15

入場料:大人 1,500円、小人 800円(小学生以下無料)

申込み:akasaka.tomoaki(a)gmail.com まで ※(a)は「@」に書き換えてください。

<映画概要>

野生では絶滅した動物種を再び野に放つことで、その土地の生態系を復元しようとする「リワイルディング(再野生化)」を成功させたオランダの自然保護区を取材し、そこで暮らす動物たちの1年間を美しい映像でつづったドキュメンタリー。オランダの首都アムステルダムから50キロの海沿いに位置する小さな自然保護区「オーストファールテルスプラッセン」。1960年代に干拓事業を行ったものの失敗し、そのまま人々から忘れ去られていたこの土地には、わずか45年で命の宝庫ともいえる野生の王国が築きあげられていた。なかでも、リワイルディングの試みとして放たれたコニック(馬)たちは、人間の介入の外でこの土地に適応して順調に繁殖し、現在では2000頭を越える数が確認されている。人間たちが手放した土地で生態系が回復していく過程をつまびらかにすることで、自然と人間との新しい関係性を模索していく。

<映画の詳細>

https://rewilding.mejirofilms.com/
https://eiga.com/movie/85476/

 

● スライド&トーク・イベント「ワタリガラスの森、神話の時間」

アラスカの森の写真をスライドでみていただきながら、アラスカ先住民のクリンギットやカナダ先住民族のハイダに残された神話を語ります。一万年以上前から伝承される生命の記憶は、わたしたち日本の神話やハワイ神話のペレにもつながっていきます。

12月12日(土)19:00 - 20:00
12月19日(土)19:00 - 20:00

参加費:1,500円(ドリンク付き)

 


【略 歴】

赤阪友昭(あかさか・ともあき)

1963年 大阪市生まれ。米国ロースクール大学院にて修士課程を終了後、米国国際公認会計事務所、国内国際法律事務所勤務を経て、1995年の阪神淡路大震災を機に写真家に転身する。1996年、モンゴルの遊牧民やアラスカ先住民との暮らしから撮影をはじめ、被写体に寄り添いながら長期にわたる取材活動を実施している。雑誌「スイッチ」や「コヨーテ」等に写真と文を寄稿し、NHKの番組制作、プラネタリウムのプログラム制作や国立民族学博物館での企画写真展、アイヌとアラスカ先住民の国際交流プロジェクトのプロデュースなど活動は多岐にわたる。東北の震災後は、文化庁の支援を受けた福島県立博物館の被災地支援プロジェクト「はま・なか・あいづ文化連携プロジェクト」に参加し、変動し続ける福島の自然環境、特に立入制限区域内のランドスケープの記録撮影を続け、映像記録「水の記憶、土の記憶ー南相馬から」を南相馬市と共同制作する。また、福島の自然環境を再認識するために招聘したオランダのドキュメンタリー映画「新しい野生の地ーリワイルディング」は日本全国で劇場公開され、現在も各地で自主上映が続いている。現在は、国内外に残された原初の信仰、縄文文化や祭祀儀礼をテーマに撮影・取材。東京及び各地方においてスライドやトーク、講演活動などを定期的に開催。2009年より写真ギャラリー「photo gallery Sai」(大阪市福島区)を主宰。著作に北米海岸の先住民と向き合った10年をまとめた『The Myth – 神話の風景から – 』(松本工房刊)がある。
URL:http://www.akasakatomoaki.net