© 2013 Taiga Koyama, all rights reserved.
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「絨毯工房の写真を撮りに、一緒にイランに行かないか?」
知人からの依頼を受け、私はイランへと旅立った。
当時の私にとってイランは、イスラムの国という知識しかなかった。
行った事のない国に行けると喜んではみたものの、いったいイスラムの国でどんな
写真が撮れるというのか?
そんな私の心象は、グランドバザールに足を入れた瞬間に一変した。そこには、
幼い頃夢中で読んだ『千夜一夜物語』の世界が目の前に現実として存在していた。
「あれ、ひょっとして凄いものに出会っている?」
そんな私の予感は、古都エスファハンに飛んだ時、確信に変わる。
かつて、サファービー朝ペルシアの首都として、アッバース大帝のもと、
「世界の半分」と謳われたその街は、今も美しさで満ち溢れていた。
色鮮やかなタイル、そこに描かれている繊細な模様、それらを緻密に組上げ
飾られているモスク。その威風堂々とした佇まいは、いにしえよりの讃歌を
余すことなく今に伝えていた。
有史以来、東西文明の十字路として幾千の旅人達を迎え入れてきた人々は、
現代にあっても、単なる異邦人の私を暖かく迎え入れ、旅人として友として、
遇してくれた。
そこに在ったのは、「イラン」という響きから連想される、核や狂信的な
イスラム国家として語られる遠い国ではなかった。
家族の幸せを願い、友との時間を大事にする。
そんな、私たちと変わらない人々とその暮らしだった。
小山 泰雅 (こやま・たいが)