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   © 2013 Taiga Koyama, all rights reserved.


「絨毯工房の写真を撮りに、一緒にイランに行かないか?」
知人からの依頼を受け、私はイランへと旅立った。

当時の私にとってイランは、イスラムの国という知識しかなかった。
行った事のない国に行けると喜んではみたものの、いったいイスラムの国でどんな
写真が撮れるというのか?

雪雲に覆われたテヘランに降り立った時、私の中では、喜びと不安がぐるぐると
渦を巻いていた。

そんな私の心象は、グランドバザールに足を入れた瞬間に一変した。そこには、
幼い頃夢中で読んだ『千夜一夜物語』の世界が目の前に現実として存在していた。

「あれ、ひょっとして凄いものに出会っている?」
そんな私の予感は、古都エスファハンに飛んだ時、確信に変わる。
かつて、サファービー朝ペルシアの首都として、アッバース大帝のもと、
「世界の半分」と謳われたその街は、今も美しさで満ち溢れていた。
色鮮やかなタイル、そこに描かれている繊細な模様、それらを緻密に組上げ
飾られているモスク。その威風堂々とした佇まいは、いにしえよりの讃歌を
余すことなく今に伝えていた。

有史以来、東西文明の十字路として幾千の旅人達を迎え入れてきた人々は、
現代にあっても、単なる異邦人の私を暖かく迎え入れ、旅人として友として、
遇してくれた。

そこに在ったのは、「イラン」という響きから連想される、核や狂信的な
イスラム国家として語られる遠い国ではなかった。

家族の幸せを願い、友との時間を大事にする。
そんな、私たちと変わらない人々とその暮らしだった。


小山 泰雅 (こやま・たいが)

写真家。
1974年 神戸市生まれ。日本大学芸術学部卒業。
広告制作会社に勤務後、オーストラリアに渡る。パースで働く傍ら、オーストラリア全土を撮影旅行する。2004年神戸に拠点を移し、現在に至る。ライフワークとして、「土地の貌」をテーマに国内外で作品を製作。

2013年、イラン取材を纏めた作品「Persia 〜peaceful moments〜」が、エプソンフォトグランプリ/ヒューマンライフ部門で三好和義賞を受賞。